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読書レビュー FIREFLY(本多孝好、MOMENT収録)

毎年この季節になると、必ずこの記事を紹介しています。

死ぬ前にひとつ願いが叶うとしたら・・・・・。病院でバイトをする大学生の「僕」。ある末期患者の願いを叶えた事から、彼の元には患者たちの最後の願いが寄せられるようになる。


FIREFLY, 本多孝好著 MOMENT (集英社文庫)に収録

6月、梅雨の季節ですね。じめじめしてあまり好きではない季節ですが、この季節の楽しみがあります。それは蛍です。今年も、妻の実家へ蛍を見にやって来ました。

妻の実家は自然の豊かなところにあり、この時期は少し歩いたところの川沿いで、綺麗な蛍を見ることができます。

蛍と言うと思い出す小説が2つあります。1つは、宮本輝の芥川賞受賞作の「螢川」。そしてもう1つが、本多孝好による「FIREFLY」です。

螢川は、蛍と言う可憐で繊細な存在が大群で現れ、圧倒的な迫力と生命力で描かれるラストが印象的です。生と死、友情と恋心、そのほの暗い語りが最後にたどり着く情景は、読んでみないとわからない凄みを持っています。

対して、FIREFLY は、か細く舞うその緑の光に、登場人物たちの思いが乗せられます。

蛍に亡くなった伴侶を重ねる老人。蛍は、亡き故人の想いを運ぶ象徴として描かれます。亡き人の想いが蛍となって現れるのか、それとも亡き人に会いたいという想いが蛍に故人の影を見つけ出すのか。普通に考えられば後者でしょう。しかし、それだけで済ませられない感傷と余韻が、むしろ会いに来て欲しいという願いすらこの物語には散りばめられているように思います。

かのピーター・ドラッカーは、「何をもって憧えられたいか」と言う言葉を残しました。これは、自己実現や社会貢献と言ったものと結びつけて考えられがちかも知れません。しかし、そんな大それたものでなくとも、誰しも根源には承認欲求を持っているのではないでしょうか。

覚えていて、忘れないで。思い出して。そんなささやかな思いが、胸に響きます。


「見て欲しかったのよ。私のこと。上田早苗っていう女のこと。昔はどんな学生だったのか、どんな会社へ行ってたのか、どんな男と付き合ってたのか、そのあとはどんなところで働いてたのか。ざっとでいいから、一通り見て欲しかったの」
「どうして?」
「どうしてかな。よくわからない」

光が上田さんの髪に止まった。気づかずに上田さんは続けた。
「ただ、もしこれから何年も何年も時が経って、もし今年と同じような夏がきたら、君はきっと私のことを思い出す」
「思い出さないですよ」と僕は言った。「僕はそんなに優しくない」
「思い出すわよ」と上田さんの声が柔らかに言った。「君はそれほど利口じゃない」




今日の晩は蛍を見て、この物語のことや会いたい人、会えない人の事、色々の事に想いを馳せてこようと思います。

ところで、この「FIREFLY」には、ここには書いていない簡単な謎もあって、物語の最後にそれが明かされる仕掛けになっています。「こんなの」「ずるい」とおもわず呟いてしまいます。上田さん、こんなのずるいよ。

人の最期を看取る、と言う題材ではあり、MOMENT と言う本自体は読む人を選ぶ側面があるかもしれません。それでもこのFIREFLY は傑作。この一作のためだけでも買う価値がある、と強く思います。


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第45回ギター音楽大賞 1日目、受賞者および演奏曲目

2021年6月19日に行われた第45回ギター音楽大賞、シニア部門(55歳以上の部)シニア部門(70歳以上の部)一般部門アンサンブル部門上級部門の受賞者および曲目紹介です。表記揺れはギター音楽大賞のパンレットに準拠します。受賞者は受賞順に記載、その他曲目は演奏順を基本とし、重複曲はx2、などのように省略しています。また、当日欠場は有無を含め反映できておりません。

#疲れたのでとりあえず曲目と受賞者一覧で本日は終了。感想などは後日追記します。

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【コンクール参加雑記】第45回ギター音楽大賞に参加して

 6/19, 20の二日間にわたって行われるギター音楽大賞の、1日目上級部門に参加してきました。まずは一にも二にも、このコロナ禍の難しい状況下で、無観客と言う厳しい選択を迫られながらも開催をしてくださった日本ギタリスト会議の皆さま方に厚く御礼申し上げます。明日の二日目も大過なく開催されることを切に祈念いたします。

 本記事は極めて個人的な感想やコンクールに関する思いを綴ったものです。出場者の演奏曲目や審査結果に関しては下記別記事をご覧ください。
第45回ギター音楽大賞 1日目、受賞者および演奏曲目


 では改めまして、参加者の皆様お疲れさまでした。そして、ご受賞の皆様おめでとうございます。私は入賞はならず、本選賞と言う名の参加賞をいただいて帰宅しました。応募者が全員参加可能な一般部門も設定されているコンクールの中で、上級部門は予選課題曲(あるいは前年度までの入賞)と言う要件があり出場人数が絞られているため、本選賞をいただけたのだと解釈しています。

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オンライン飲み会の幹事必見!無料で使えるツール「SpatialChat」のプランおよび管理者権限に関して

コロナ禍で一気に普及が進んだオンラインコミュニケーションツールの一つとして、SpatialChatというユニークなサービスの提供が開始されています。元々2019年以前から開発検討されていたサービスが、コロナ影響もあり開発が加速、2020年4月ごろには無料版が発表されました。2020年8月以降有料化されていますが、2020年12月現在、実は無料プラン(Free Plan)でもかなり使えるサービスとなっています。2021/6/18、無料プランが拡張され、さらに利用しやすくなりました。

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コンクールが週末に近づいてきました。

ギター音楽大賞が今週末の6/19, 20に近づいてきました。私は19日の上級部門にエントリーしています。

昨年度はコロナ禍のため開催が中止となりました。今年度も緊急事態宣言の発令期間と重なるため、無観客での開催となります。この状況下での開催には皆さま色々なお考えがあるでしょうが、感染対策に気をつけ参加させていただきます。

一昨年に同じく上級部門に挑戦したときは、大好きな曲で納得のいく演奏ができたものの、奨励賞止まりで金銀銅賞に届かず悔しい思いをしました。と言うか、演奏に悔いがなかった分、後から悔しさがこみ上げてきて、帰宅してから泣いた思い出があります。その後、コンクールへの取り組み方やエントリー曲に関して悩んだ挙げ句、今年は私なりに技巧的難易度の高い曲に挑戦しています。そのため、そもそもノンミスでの演奏自体が難しいだろうなというので今から緊張、と言うか落ち着かない気分です。

それでも、コンクールと言う機会を活用して昔から自分が大好きだった曲にしっかり向き合えたこと。そして、自分には弾けないと思っていたレベルの高い曲を通して弾けるようになったこと。これらは大きな収穫でした。この難しいご時世に開催に踏み切ってくださった主催者への感謝を胸に、無観客ではありますが心を込めて、悔いのないように演奏したいと思います。

音楽は競争ではありません。しかし、皆が最高のパフォーマンスを目指して演奏する場に、期するものはあります。いい演奏がしたい。
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パソコンからマウスとキーボードを取り除く話。当たり前を止めて新しい世界を作り出す

※コロナ禍の始まる少し前の2019/11に記載した本記事。当時はこんな日々が来るとは思ってもいませんでした。しかし、残念なことにこれまでの常識が通用しない時代が確実に始まってしまいました。

私の周りでは、これまでの対面レッスンだけでなくオンラインレッスンにも対応する教室が増えています。これも、1つの転換ですね。過去のやり方や当たり前に敬意を表しつつ、新しい世界を模索したいものです。※


新しいものを作り出すコツとは、一見当たり前に思えることを止めることから始まる。そんな話をかつてセミナーで聞いたことがあります。話者は日産の元エンジニアで、GTR開発で有名な水野和敏さんでした。そんな話をクイズ形式でお届けし、常識を疑うことの大切さを考えてみたいと思います。

では第一問。あ、答えは普通に書いていますので、ゆっくりスクロールしてくださいね。。

パソコンから〇〇を取っ払う


パソコン、みなさん知っていますね。はい、これから、当然必要だと思われているあるものを取り除くことで、今世紀を代表する製品が生まれました。


では、まず取り除かれたあるものとはなんでしょうか??

それはキーボードとマウス。さて、この2つを取り除くと、一体何ができるでしょうか?


答えは、iPad(タブレットPC)でした。

こんな感じで、どんどん行きますよー。


掃除機から〇〇をなくす


さぁ、電機メーカーのエンジニアの気持ちになってください。「画期的な掃除機を作れ!」by社長。さて、掃除機から何をなくしましょうか。

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