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"さくら"による主題と変奏(横尾幸弘) 演奏紹介および版による楽譜の差異について

"さくら"による主題と変奏
Theme and Variations by Japanese Folk Song "SAKURA"



作曲:横尾幸弘(様々な版がありますが、上記演奏は改訂版を使用しています。というか、版だけでなく、タイトルも色々言われますよね。「さくらの主題による変奏」とか、「さくら変奏曲」とか。)

日本人なら誰でも知っているさくらさくらの民謡、クラシックギター向けの変奏としては、横尾幸弘さんのものが定番です。John Williams(ジョン・ウイリアムス)の演奏で一躍有名になったということです。

以下、楽譜の版の紹介です。
出版の経緯
1) 横尾さんの演奏(原版)が世に出る
2) 1)をジョンが聞き、気にいって横尾さんに連絡
3) 横尾さん、改訂版を作成しジョンに送付
4) ジョン「前の方がよい」と言うことで改訂版を使わず、原版で演奏/録音・・
と言うことで、世には大きく2種類の版が存在しています。

○原版
ジョンの系統のもの。現在GSP社から発売されているものも、こちらのようです。
・構成:Introduction, Theme, Variation(1st-4th), Coda
・さくらの主題(ラーラーシー)がわかりやすく提示される。
・変奏が4つ、演奏時間も5~6分くらいと比較的短め
・現代ギターで購入可能です。注釈は下記の通り
「セルシェルが録音に使用した版。ジョン・ウィリアムズは録音時期により演奏した変奏が異なりますが、本ピースが近い版となります。」

○改訂版
横尾さんが「世界のジョン」に向けて(気合を入れて?)作っただけあって、変奏の種類も増え、凝った作りになっています。さくらのテーマ(ラーラーシー)も、原版ほどはわかりやすくありません。
・構成:Introduction, Theme, Variation(1st-6th), Codaと・変奏6つ、演奏時間約8分程度
・大萩康司さんはこの改訂版を用いて録音されているようです(アルバム「島へ」収録)。

私は今回の演奏にあたり、横尾さんの思いのつまったものを演奏したいと言う思いで改訂版を使用しました。・・・嘘です、、最初手元に会った改訂版を使用して取り掛かりました。後ほど、GSP社の原版を購入し、差異を教えてもらった、と言うのが事実です。

ところで、実はこの改訂版にもいろいろな種類があります。ここでは、大きく下記2点を取り上げたいと思います。

①第二変奏最後の和音(私の演奏で3分29秒あたり)
第二変奏は「ラレファミ」の和音で終わりますが、ファには♯が付いています。ここで一気に和の香りがしなくなるため、誤記では?との解釈もされるようです。ちなみに、前述の大萩さん録音では、「ハーモニクスのミ単音」にされているため、この議論は不要になっています。

この和音は原版第三変奏に相当するところで、原版では♮(ナチュラル)ファの表記です。正確には、イ短調で臨時調号なし。改訂版にするにあたりファを♯に変更し、さらに第三変奏を追加した、と言うのが変更の履歴のようです。

この改訂版で追加された第三変奏がポイントで、もともとは横尾さんが別で作曲されていた練習曲を、変奏の一つとしてこの「さくら」に追加したもの。確かに、この第三変奏では(変奏にも関わらず)さくらのテーマそのものは出てきません。練習曲と言うことで、フレーズの終わりはE(♯ソ)⇒Amへの終止を伴う構成になっています。この、西洋的終止の変奏前最後の音と言うことで、日本的旋律から西洋的和音の橋渡しの役目として、ファを♯にしているようです。

②第六変奏 12小節目の「ミ」(私の演奏で6分45秒あたり)
12小節目(最後から二小節目) 低音の旋律が、もともとはシラファ「レ」ファラシレであったのがシラファ「ミ」ファラシレに改訂されているのが、最新と言うことです。ここは、演奏される方にはぜひ両方試してもらいたいところです。「レ」だと少し重たく沈むのが、「ミ」にすることで旋律が大きく跳ね上がりコーダに向かっていくエネルギーが出てきます。


というわけで、横尾幸弘さんの「さくらによる主題と変奏」の演奏紹介と、楽譜に関する情報でした。
普通に聞いても優れた名曲ですが、隠された歴史や思いを知ると、もっと素敵で演奏するのが楽しくなりますね。

先日飲み会にて、この曲の楽譜の話になりましたので、残しておこうと記事を書き、合わせて動画もアップすることにいたしました。過去に猪居ギター教室定期演奏会にて発表した際のもので、「もう少しできるだろう」と少し悔いの残るところがあったためお蔵に入れておりました。

2015/12/30 初投稿
2019/7/16 加筆再投稿
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