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クラシックギターにとってのクレシェンドを考える

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今日はギターでクレシェンドをどう表現するかに関して考えてみたいと思います。ギターという楽器の特徴の一つは、撥弦後に音を大きくすることができず、減衰していくのみであると言うことです。バイオリンのような擦弦楽器やクラリネットのような管楽器であれば、時間経過に沿って物理的に音量を大きくすることができるため、大きく異なる点であると言えます。

音の自然減衰。これは、クラシックギターを魅力的にする特徴です。しかし、「クレシェンド:だんだん強く」という表現に対するアプローチを難しくしています。この点を、少し詳しく見てみましょう。


そもそもクレシェンドの意味は
クレシェンド(crescendo、cresc.)、は「だんだん強く」を意味する強弱用語で、「成長しながら」という語源を持ちます。「だんだん大きく」ではなく、「だんだん強く」と訳されているところが興味深いですね。「f:フォルテ」の意味を聞かれると、みなさん自然と「強く」と答えると思うんですよ。「大きく」ではなく、「強く」。クラシックギターのようなアコースティック楽器であれば、撥弦を強くすれば音は結果として大きくはなります。ただし、音を大きくすればいいってものではなく、音楽を力強くすることが本来の目的であることを忘れてはダメですね。クレシェンドも同じで、だんだん大きくしようとして音のまとまりがなくなったり、瞬発的になりすぎて音に芯がなくなったりしないよう注意が必要です。


お題:Am(ラドミ)の和音をクレシェンドしてみる

1_Am.jpg


ラドミによる和音(Am)の譜例1を示します。はい、これをクレシェンドしてみましょう。
音を強くしていくので、だんだん右手指が弦に与えるエネルギーを大きくしていく必要があります。これは、様々なやり方あり、かつ文字にすることが極めて難しいためここでは深く触れません(えっ)。大きな音にこだわって手首を壊さないようお気を付けください。関節の固定化や筋肉の硬化、アタックの高速化、大きな筋肉を使う、など色々な説明がありますので、また考察してみてください。

構成音数を増やす
音を大きくするための、単純かつ明瞭な方法は、音の数を増やすことです。これを、譜例2に示します。
2_Am_構成音を増やす


同じラドミの和音でも、音の構成数が3つ⇒4つ⇒5つと増えていきますね。こうすれば、一つ一つのオタマジャクシの音を大きくしなくても、全体として音量が大きくなりますね。作曲家、編曲家が大きな音を欲しい場合は、このような仕掛けを自然と組み込んでいます。これを見つければ、「クレシェンド」とあえて記載されていなくても、その意図を読み取る必要がありますね。

強調する音を長く持続させる
音量の総エネルギーを大きくする方法は、他にもあります。強調したい音の持続期間を長くすることです。同じく五線譜上に示しますが、縦軸が音量、横軸が時間経過を示すと考えて読んでください。音価(音符の示す長さ)通りに演奏する上段に対し、後半の音を意図的に長く持続させることで、結果としてエネルギーが増えたかのような錯覚を起こすことが可能です。ほんの少しリタルダンドする、ということですね。

3_持続時間を変更する

音を大きくするに瞬発力を増やそうと指の動きを速くすると、意図せずテンポが速くなってしまうことがあります。そうではなく、きちんと音をぎりぎりまで伸ばす、それによりしっかりとクレシェンドを聞かせることができるんですね。この音を指示として明確に記載すると、「アラルガンド(allargando)」になります。なんだかゲームに出てきそうな名称ですね(それはザナルカンド)。アラルガンドは「拡張する」を語源とする音楽用語で、「だんだん遅く、だんだん強く」という意味です。クレシェンド+リタルダンドと説明されることもあります。

もちろん、曲としてクレシェンドと同時にアッチェレランド(加速)をする曲もありますのでケースバイケースではあるものの、音を大きく聞かせるテクニックとして覚えておいて損はないでしょう。気が付いたら走っていた、ということを避けるだけでも大きな意味がありますね。



関連記事:クラシックギターの魅力 ~消えゆく音の美しさ~
関連タグ:演奏・練習のコツ

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