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Sidewalk Talk

突然ですが、問題です。人間の五感の中で一番記憶に直結しているのは何かご存じですか?私はこの答えを、ある小説の中で知りました。今日はその小説の話もしたいと思いますので、少しネタばれを含みますのでご注意ください。

※別にミステリーではありませんので、このネタを先に知っていたとしても物語の魅力は何ら失われないと思います。



この話が載っているのは本多孝好さんの「Sidewalk Talk」と言う短編小説で、祥伝社の「I LOVE YOU」と言うアンソロジーに収録されています。

この物語は、五年間続いた結婚生活に終止符を打とうとしている夫婦の話です。夫婦生活最後の晩餐が、学生時代の出会いやこれまでの出来事に関する主人公(男性)の回想を交えながら進んでいきます。そして、食事も終わりこれで本当に最後と言う時に、突然彼を激情が襲います。圧倒的な何かが体を通り抜け、眩暈すら感じたのは、・・彼女がつけてきた香水のせいでした。そして・・。

と言うわけで、冒頭の問題の正解は「匂い」です。嗅覚を司るのは大脳の旧皮質で、その両側にあるのが海馬と言って記憶を司る部分。だから嗅覚は五感の中で一番記憶に直結しているらしいです。ちなみに、この記事を書くにあたって少し調べてみると、匂いは脳の原始的な部位に繋がっているため、記憶だけでなく感情にも影響するらしいです。

私は、実際にこのような経験をしたことがあります。電車に乗っていて、昔好きだった女の子がつけていた香水の匂いがしてきて、びくっとして振り返ったことがあります。匂い一発で何か昔にがつーんと引き戻される感じ。主人公の言葉を借りるなら「圧倒的な何か僕の体を通り抜ける」感覚。過去に自分がそのような経験をしていたからこそ、この物語がとても好きになったのかも知れません。

本多孝好さんの魅力の一つは透明感だと私は思っています。その透明感の中で、「匂い」と言うものを媒体にして、こみ上げて来る記憶や感情が効果的に描がかれています。この雰囲気・感覚が大好きでこの作品は何度も読み返しています。


さて、なぜ今日この話を突然書いたかといいますと、、お盆休みと言うことで昨日クラブの仲間と集まって久しぶりに話をしていて、この話になったのがきっかけです。そして、私の目指す音楽の行き着きたいところは、ここで言う「匂い」のような音楽なので、ブログに書いたわけです。

「1音で世界を変える」、それが究極の目標です。理屈抜きに問答無用で心に突き刺さる、匂いのような音楽。聞いていて、ふと昔どこかで見た風景を呼び戻す、とか、なぜか涙が出そうになる、とかそう言う空間を生み出したいのです。伝わりにくいかも知れないけれど、匂いで感情を呼び起こされたことのある人だけでも通じてくれたら嬉しいです。


さぁ、爪を磨きますか・・っ!


音律と音階の科学

音律と音階の科学 ドレミ・・・はどのようにして生まれたか
小方 厚著、講談社ブルーバックス
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今日は、調弦と平均律に関して少し書いて見たいと思います。と言っても、説明するところまでは行きませんが・・。

クラシックギターを演奏するにあたり、最初に覚えなければならないことの一つが「調弦」です。調弦とは、ギターの弦6本をそれぞれ演奏に適した音程に合わせることを言います。チューニングともいいますね。ピアノの場合は調律と呼ばれ、専門の調律師さんが音程あわせを行うことがほとんどだと思います。

この作業、やり方はいろいろあります。方法に関しては各種教本やサイトで述べられていますので詳細は省きますが、例えば下記の様な方法があります。
①音叉で基準音440Hz(5弦ラ)のみを合わせた後、実音で他の弦を合わせる。
②音叉で基準音440Hz(5弦ラ)のみを合わせた後、ハーモニクスを用いて合わせる。
③チューナーを使用して各弦を順番に合わせる。
などなどですね。他にも色々な方法がありますね。

初心者のうちは、「気持ち悪くなければいいや」で大胆に通り抜けられる調弦です。しかし、演奏に慣れてきて耳がよくなってくると、「この調弦では気持ち悪くて弾けない」と思うことが逆に増えてきます。では、①②③どの調弦方法がよいのか、それとも他の調弦方法を探す方がよいのか・・ と、特に独学の方は下手をすると路頭に迷いかねない大事件になります。しかし、実は調弦方法をどのように変更しても、演奏時の不快感を完璧に解決することはできません。この不快感は、調弦の問題ではなくて「ギターが平均律楽器である」ことによる根本的な問題だからです。

では、平均律とは一体何なのか、、そもそもドレミとは・・? これを分かりやすく説明してくれているお勧めの本が、「音律と音階の科学(小方厚・ブルーバックス新書)」です。「ドレミは・・は、まずピタゴラスが決めた!」ってご存じでしたか?音楽の世界になぜ三平方の定理で有名な数学者の名が出てくるのか、それは音楽が極めて数学的な理論のうえに成り立っているからなのです。逆に言うと、この本は数学が苦手な方には少し敷居が高いかもしれません。。

音感があればあるほど、逆に「平均律の限界」に起因する不快感は大きくなってしまいます。独学で音楽をやっていて音律に関しての知識がないと、不快感の原因が分からずもやもやしてしまいます。実際に私がそうでしたf^^; 調弦が気になっていじってもいじっても不快なうなりが消えない、何故だー!ってなってしまうのです。しかし、音律に関しての知識を得てからは、「どんなに調弦にこだわっても完璧に調和した音にはならないんだ」と理解することが出来、自信をもって(?)調弦をほどほどで終わらせることができるようになりました。

調弦が合わなくて苦労している方や和音が不協な気がする方で、平均律とは何かをご存じない方は一度調べてみられることをお勧めします。私のお薦めは上記「音律と音階の科学」ですが、けっこう数学よりですので、拒否反応を起こされる方は他の本で・・。

平均律と調弦に関しては、また機会があれば当ブログでも書いてみたいと思います。