fc2ブログ
                        

第46回ギター音楽大賞に出場しました

スポンサーリンク



 鉄は熱いうちに打て、と言いますけれど、ではどれくらい急いで打たないといけないのでしょうか?どの程度放っておいたら冷めてしまうのか、私は存じ上げません。熱く溶けた鉄の実物など見たことはありません。では、人の心はどうなのでしょう。心は熱く溶けることがあるのでしょうか。もし溶けるほどに心が熱くなることがあるのならば、それは果たしてどのくらいで元の通りに戻ってしまうのでしょうか。分かりませんが、今はとにかく、その熱が少しでも冷めないうちに、言葉を紡ぎたいと思います。

 本日、第46回ギター音楽大賞上級部門に参加し、奨励賞を受賞しました。奨励賞を受賞するのは、五度目となります。奨励賞を受賞している、ということは、そのいずれも、金銀銅の上位入賞には届いていない、ということです。何も賞をもらえないよりは嬉しいものの、あと一歩、もう一つ上の賞がに手が届かないことにはもどかしさを感じます。
 私は苗字が「あ」から始まるので、子供のころからいろんな順番が早くに回ってきます。新学年の挨拶とか身体測定とか、何なら1番になることの方が多かったくらい。今日も、演奏順の抽選を最初に引きました。番号の書かれた割りばしの束から、適当に1本ホイホイ~、と引くと、、14番。なるほど、14番ね、若すぎる番号じゃなくてよかった、、と思っていたら、「あしゃおさん、それラストですよ」と。というわけでまさかの大トリを引いてしまいました。でも、これはある意味ありがたかったです。控室で待って、奏者の人が少しずつ減っていくあの感じ、嫌いじゃありません、というか好きです。それに、丸1日多くの方が挑戦し演奏するコンクールのラストに演奏させていただける、なんて僥倖じゃないですか。このコンクールに足を運んだ方、会場に居らっしゃる方に、最後まで聞いていてよかったと思っていただける演奏をしよう、と決意しました。

 いざ控室にいると、みなさんめちゃくちゃ上手なんですよ。そりゃまぁ、録音審査を通過された方々なので上手なのは分かっているんですが、それでもやっぱり上手い。あと、曲目がえげつない。よくそんな曲弾けますね、ってののオンパレード。ただ、そういった環境や演奏順がラストであることも含めて、もう自分の演奏をすることに、曲の良さを引き出すことだけに目標を絞ることができました。他の人との競争はいったん忘れて、自分の思うギターの良さを引き出せたら素敵だな、とそんな気持ちで。

 そしていざ本番は、、自分ができることをしました。ホールの響きも楽しんだつもりですし、客席にもアンテナを張って、自分の殻に閉じこもらず舞台だからできるものにしよう、と心がけました。けれど、思うように指が動かない。なんでここ弾けないんだ、とか考えながら弾いていると、右手が完全に震えていました。指がこわばって、弦にセットできない。焦りだすと、いくら心の中で落ち着け落ち着けと繰り返しても、震えが止まらない。いい演奏をしたい、と思ったのに、最後は破綻しないように終えるので精いっぱいでした。せっかく最終順で演奏できたのに、万全の演奏ができなかった悔しさ。それでも、震える手で致命的なミスは避けて最後まで到達できた安堵。最後の二小節くらいは、ほとんど泣きそうでした。演奏後、誰もいない控室で倒れ込みました。吐きそうでした。

 心が溶ける、ということがあるのか、そもそも溶けるような心がいったい人間にどう宿るのかさえ、私は寡聞にして知りません。けれども、もしも心が溶けるということが起こりうるとすれば、このとき私の心はドロドロに溶けていたのではないでしょうか。ありえない熱量を内包し、煮えたぎっていたことでしょう。

 ゲスト演奏から結果発表までの待ち時間は、恐ろしく長く辛い時間でした。審査委員長の猪居亜美先生の講評。「舞台慣れしている方が多いとの印象を受けた。個性と選曲があっている人が上位にきた。ただし、個性に走りすぎず楽譜から説得力のある演奏をしてほしい。」 こういう時の講評って、いつも自分に向けて言われているような気になります。。審査員の先生による発表は、銅→銀→金、その後奨励賞、の順となります。金賞はないな、と言うことは自分で薄々感じているので、銅、銀とと名前が呼ばれないと、あぁ、今年もダメだったか、、と言う気持ちになるわけです。そしてそのあと、奨励賞で名前が読み上げられる。。賞がもらえてよかった、という嬉しさと、上位に届かなかった、という悔しさが同時に押し寄せます。ステージでの表彰式を終え、荷物を置いた客席に戻ると、少し涙がこぼれました。嬉しさなのか悔しさなのか、自分でもよくわかりません。後悔はありませんが、舞台上でやり残したことはあります。とは言え、例えば緊張のミス分は、大きなミスにしなかったことで奨励賞への道が残った、といったものであり、これ以上ミスを減らすことができたとしても上位に食い込めたかは微妙だったような、そういうレベルのものだと自分では思っています。

 心が熱く溶けているうちに言葉を、と書き始めた文章でしたが、ここまで打つ間にだいぶ熱は冷めてきたようです。この気持ちを言葉にしたことで、何か得るものがあるのかは分かりません。ただ未来の自分がこの文章を目にすれば、今日この日のことを少しは鮮明に思い出せるのかもしれないな、と思います。来年以降の挑戦をどうするかは、この文章を見ながら考えることになるでしょう。響きのよいホールで弾けることへの感謝。得も言われぬ緊張感。その中で多くの方に演奏を聞いていただける仕合せ。あれ、こう書いているといいことしかないですね・・でも、結果が出ないことへの恐れや不安も、間違いなくあります。あと、演奏曲を考えるときに、評価されそうな曲、時間制限に収まる曲を探してしまうという負の側面から脱出したい、という思いは最近常に持っています。。

 あと1日を終えての感想ですが、コンクールを通じて顔見知りになった方々と、調子どうですか~とかお話できるのはとても楽しいですね。また、何人かの方から、ブログ見てますよ、とお声かけいただきました。日記公開している側面もあるので少し恥ずかしいのですが、でも嬉しかったです。こんな駄文でも人と繋がるきっかけになれると思うと、これからも続けていこう、と言う気になりますね。Twitterの仲間とも会うことができました。ギター好きが集まるこの空間、好きだー!・・あれ、やっぱり来年も出るしかない、のかな?

 最後に、審査委員の先生方、運営の方々ありがとうございました。明日の2日目も盛会となることを祈念いたします。明日出場される方、頑張ってください。

2022/4/30深夜 麻尾
関連記事
                        

コメント

非公開コメント