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ギター演奏時の手・腕の脱力方法 腱鞘炎・故障の予防に

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クラシックギターの演奏時には、手を脱力できることが大切です。その理由としては、例えば下記があります。
・腱鞘炎や怪我を予防できる
・可動域が広がる
・なめらかな動きができる
・長時間の演奏時に疲れにくい

色々メリットはありますが、最も大切なのは、怪我予防であると考えます。そのためには、体の構造を学びましょう。ここで大切となるキーワードは、橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)です。このあたりは、市販の諸々の筋肉・骨格に関する書籍はもちろん、「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」も音楽家には大変参考になります。また、スポーツの観点からは下記サイトがわかりやすく、ご一読いただければ本記事とお互いに補完できる部分があると思います。
【コラム】腕を力まずスムーズに操るコツ(1) 橈骨を意識する(Team-PCS)


腕の脱力チェック方法


細かい話に入る前に、まずは今自分が脱力できているのか、チェックしてみましょう。以前福田進一先生に公開レッスンで教えていただきました脱力チェックの簡単な方法を紹介します。左手でやってみましょう。

1) 左手の手のひらを上に向けて、机などにおいてください。
2) その状態で、手の甲側の中指付け根(第3関節)辺りを、右手で上に向かって押してください。

このとき、脱力ができていると、手首が曲がると同時に、自然と指が広がり、下記のような動きとなります。元々閉じている指が、起き上がると同時に広がってくるのがわかるでしょうか。これは、意識して広げているのではないことに注意してください。
20190616_194827.gif

脱力できていないと、そもそも手首が曲がりません。あるいは、手首は曲がっても指が広がってこない。この場合は、怪我、腱鞘炎の予防の意味も込めて、自身の腕の使い方を見直してみましょう。

脱力するための腕の使い方


では次に、脱力するための腕の使い方、メカニズムを学びましょう。
ポイントを言葉で列挙します。あくまで、左手(ギターのフレット側の手)を、手のひらを上にして脱力する際の説明と考えてください。
・橈骨と尺骨を交差させない
・上腕二頭筋(力こぶ)を前に向ける
・そのために、肩甲骨からリラックスする

橈骨?尺骨?なんじゃそれ・・?はい、そうですよね。というわけで、Wikipedia先生より図の引用です。
赤くマークされている、小指側の骨が「尺骨」、それに沿うように並んでいる、尺骨より一回り太い骨が「橈骨」です。まさにこの絵の状態が、「橈骨と尺骨が交差していない」状態です。
橈骨、尺骨

橈骨と尺骨を平行にする


手の表裏をひっくり返す際に、尺骨を中心に橈骨を回転させられていれば、基本的に脱力の素地はできています。しかし、橈骨と尺骨が交わるように腕を使っている方は、その時点で腕の筋肉に余計な力が入っています。こうなっているかたは、上記「脱力した動き」ができないのではないでしょうか。

では、どうやって尺骨を中心に橈骨を回転させればよいか。「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」P60より引用します。「幼い演奏家にはこんなふうに教えます。(中略)新聞紙とクレヨンを用意します。前腕を新聞紙の上にのせ、手のひらを上に向けます。そのまわりをクレヨンでなぞります。それから注意深く、手のひらを下向けにさせますが、ひじで回転するように指導します。それ以外では回転しません。」
ここでいう「ひじで回転」というのが、尺骨を中心に橈骨を回転させることをさしています。このときの回転前(クレヨンの絵)と回転後(実際の手)が蝶々の形をしていることから、「音楽家ならだれでも知っておきたい「からだ」のこと」では、「スタジオ中にチョウチョウをとばす」と表現しています。下の引用図が、チョウチョウです。
チョウチョウ

このように、脱力して上手に肘から先を使うには、橈骨と尺骨が平行していることが大切なのです。では、その状態を保ったままで左手で指板を抑えるには・・。これは猫背になっていてはできませんね。肩甲骨から肩を開くことで上腕が前を向き、そのまま指板に対して自然と左手を垂らすことができるようになります。これが自然とできるようになれば、それを右手にも応用できるのでは、と考えます(偉そうにブログ書いてますが、私もまだまだ研究中・・)。

小指は尺骨の延長線上におく


さて、この本でもう一つ、ギタリストにとって明瞭かつ重要な点として、「休止の関係のとき、小指は尺骨の延長線上にある」と言うポイントがあります。「親指が橈骨の延長線上に来るのではありません」。これも、同じく図(P62)を参照するのがわかりやすいでしょう。
小指は尺骨の延長
これは、左手のみならず、右手のフォームに直結する大切な、そして今までのいろんな際どい内容の中でも、最も話題にするのが恐ろしい内容ですね。なんせ、この理論でいくとあのタレガ先生のフォームにケチをつけることになりますから・・。。実際、「親指が橈骨の延長に来るフォーム」でいい音を奏でるプロや、故障知らずの演奏家も大勢いるので難しいところですが、、少なくとも、故障のリスクが低いのは「小指が尺骨の延長に来る」方だと私は解釈しています。ご自分で双方の弾き方を軽く試して、負荷のかかり方を体感されるのがよいのではないでしょうか(あくまで、感触を確かめる程度に軽く、の話です)。タレガ流のフォームを採用される方は、くれぐれも腱鞘炎にご注意ください。

タレガ先生の時代とは、要求される音量がそもそも異なる、と言うことを下記記事で言及していますので、こちらもよければ併せてどうぞ。

タレガのフォームとサロンの時代



「小さな手」からみる脱力


この脱力を、まったく別のアプローチで説明している本がありましたので、こちらも紹介したいと思います。「動く骨(こつ) 手眼足編、ベースボールマガシン社」です。この本は、中手骨を「小さい手」と位置づけ、この小さな手を常に意識することで様々な動作を改善する、というテーマで書かれています。この本のP65に出てくる「「小さな手」の中指の先(コブシ)を支点として動かせますか?」というのは、本記事でいうところの「脱力」と非常に近いところにあると考えています。こちらの書籍は、少し値が張りますが、機会があればぜひ手に取ってみてもらえれば、いろいろな発見がある内容になっています。
大きな手と小さな手

手首の動き
手首の動き_NG


ちなみに、片仮名で書く事の多い「コツ」と言う言葉ですが、これはもともと骨(こつ)と漢字で書くもので、物事の骨格を意味した言葉であり、これが転じて要点や要領の意味を持つようになったものです。この「動く骨」、コツと言う言葉を正確に使用されていますね。動くホネだと単なるホラーですが笑

最後に、このサイトで繰り返し申し上げていることになります。「断定ブログは信用するな」。あくまでご自身で内容を咀嚼し、その有用性、有効性を確かめてください。本記事の内容は、私には非常に納得性の高いものですし、少なくとも「橈骨と尺骨」について学ぶことは間違いなくプラスになることです。ただし、それをどう自分に落とし込むかは、ご自身で自分の体と対話しながら決めていただければと思います。人の説明を無条件に自分に取り入れて腱鞘炎になっては元も子もないですよ。




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