参列者は、言うほど余興に興味がない
興味が余りない、略して余興と言うのかは知りませんが、まぁそんなもんです。一般受けのいい曲にしようか、とか、少しでも有名な曲をとか、そう言う参列者に媚びるような選曲は、結果として意味がないことが多いと思います。結局、一番演奏を聞いてくれるのは、演奏をお願いしてくれた高砂の新郎新婦です。その他の参列者はお酒飲んでワイワイ、フォークとナイフをガチャガチャ、となることは珍しくありません。でも、それは仕方ないよね。
たいていの参列者は新郎新婦をお祝いに来ていて、久しぶりに会う仲間や親族との会話を楽しみたい。あわよくばご祝儀を取り返そうと美味しいご飯を食べてお酒を飲むのです。悪気はなくとも、余興を見てないこともありますよそりゃ。なので、ここは迷いなく1点突破、新郎新婦が一番喜んでくれる曲を考えましょう。
ちなみにかつて1度だけ、私の余興中に新郎の友人たちが高砂に押しかけて乾杯を始めてしまったときがありました。
いくらクラシックギターが地味だからってそりゃないよー)力不足で申し訳ない。後でめっちゃ謝られましたけどね(笑)
新郎新婦が喜ぶと、みんな仕合せ
結局これなんですよ。高砂の2人が仕合せならみんな仕合せ。これに尽きる。なので、2人が好きな曲や、2人に捧げたい曲だけを本気で考えましょう。
例えば私は、クラブの先輩である新郎に捧げたくて、ブエノスアイレスの冬を弾いたことがあります。知名度のある曲ではありませんが、それが1番心に届くと思ったからです(演奏の後席に戻ると、別の先輩が泣いていたのも懐かしい思い出 笑)。その後わかったのですが、新婦の母親が実は音楽の先生をされている方でした。「まさかピアソラが聞けるとは思わなかった、いい演奏だった」と喜んでいただけけ、この時ほど、恐れずに届けたい曲を弾いてよかったと思ったことはありません。
結婚式で羽衣伝説を弾いた猛者も
こんな話をギター関係の飲み会でしていたところ、スペイン帰り大阪在住で活躍される某I崎先生が「僕は結婚式で羽衣伝説弾いたことあるけどね」ですって!いやいや、羽衣伝説って、どういう事?!
説明しよう、羽衣伝説とは藤井敬吾氏に依る、沖縄の旋律が美しく、また演奏時間が
20分に及ぶことで有名な曲である。念の為に繰り返す、
20分である、誤植ではない。短縮版もあるが、そちらも10分だ。しかも、調弦はDADGADの変則チューニング。逆ラスゲアードなどの特殊奏法もたくさん。演奏はもちろん譜読みも練習も大変。とにかくなにかにつけて大変な曲なのである。
変則調弦の曲を知るいや、なんで羽衣伝説なんです?と聞いたところ「生徒にどうしてもと言われたからー。自分で選ばへんやん」とのこと。そらまぁそうか、、生徒さん、よっぽど羽衣伝説が好きだったんでしょうね。。でも、新郎新婦の喜ぶ曲、という意味で、リクエストに全力で応える、というのは本当にプロギタリストらしい素晴らしい気概だと思います。
私も大好きな、大萩康司さんによる羽衣伝説はこちら。長いので2分割されてるよねー。まぁ、こんな演奏ができたら拍手喝采、長くても歓迎されるでしょうけど、、いや、でもさすがに20分はやりすぎ・・?
前編
後編
とは言え、ポピュラーな小品と合わせるのもいいですよ
新郎新婦のためを思う、気持ちを込められる曲と言う大前提を崩さない上で、短めのポップスや有名曲と組み合わせる、と言うのは戦略的にはありだと思います。聞き馴染みのあるメロディや流行りの曲でみなさんの意識を引き、また自分の指ならしも兼ねる。そして、本気のクラシックギター曲で、新郎新婦が好きな「クラシックギター」の本気の素晴らしさを届ける。時間にもよりますけれど、できるならこれがベストな組合せになるのでは、とオススメします。下記で自編のワーグナーの結婚行進曲の楽譜も共有してますので、よければご覧くださいね。
ギターソロ用楽譜 結婚行進曲(婚礼の合唱) R.ワーグナー私のオススメするクラシックギター曲は
・そのあくる日(R.ゲーラ)
1曲の中での緩急のバランスが素晴らしい。美しいメロディも、アルペジオパターンからの盛り上がりも文句なし。最後の上昇メロディからミ→レ♯の余韻も、ギターの良さが5分に詰まった名曲。
・思い出の組曲よりホローポ(J.L.メルリン)
弾いて楽しい、見て楽しい。ノリの曲なので、止まりさえしなければ勢いでいける。ラスゲアード盛り上がる。最後の和音の終わった感でみんな拍手しやすい。エボカチオンと合わせるのもあり。
なんだかんだ言っても、攻めすぎた曲よりは分かりやすい曲の方がいいのかな。他には、エピソードなども含めて、下記楽曲を弾いたことがありますよ
・パッサカリア(S.L.ヴァイス)
・ワルツ風に(アクアレルより、S.アサド)
・フォーコ(リブラソナチネより、R.ディアンス)
・
家族になろうよ(福山雅治)・海の見える街(久石譲)
・
愛の讃歌(M.モノー)・
BLUE(家高毅)家高毅さんのBLUEなんかは、たぶん会場にいる誰も知らないだろうみたいな曲なんですけれど、この曲だ、と思って演奏しました。式場が神戸の海と空のきれいなところで、これ以上相応しい曲は、これ以上気持ちをこめられる曲はない、と言う勝手な確信があって。結果、演奏しているとなぜか会場が笑い声に包まれだしたんですよ。あれ、結構いい演奏してると思うんだけど、なぜだ??と思いながら周りを見渡したら、高砂で新郎があり得ないくらい号泣していました。。(笑) でも結局、余興を届けるって言うのは、そう言うことなんじゃないかな。届けるのは曲ではなくて思い。そのための媒体を選ぶには、認知度って言うのは大きなポイントではないんでしょう。
アンサンブルをするのもオススメ
ギター関係者の結婚式では、重奏やアンサンブルも行いました。アンサンブルをする際は、自分で編曲をすることもよくありました。出来はもちろん素人に毛が生えたようなものです(と言うか毛が生えているかも怪しい)。けれど、その人のことを思いながら、曲を聞き、音を取り、譜面に起こす。合わせ練習をする。そんな時間が尊くて好きなんです。あと、自分で譜面を書いた際には、演奏後にその楽譜をプレゼントできるんですよ!これは唯一無二ではないか、と思っています。
余談: 喋り過ぎには気をつけて
演奏前にマイクを持って色々喋ると、その間に緊張が襲ってきたりもします。最低限の言うことを決めておいて、さっと演奏に移ったほうがよいかもしれません。だいたいエピソードトークしだしてからギター弾くと、時間的にも長くなっちゃいますし。本当に演奏に集中したいなら、奏者/曲目紹介は司会者に任せてしまうのもありですよ。
大切なことは、気持ち
元々この記事を書いたのは、2019年12月。それから半年が経たない間に世界の状況は一変し、結婚式を挙げること時代が叶わないケースもあると聞きます。会うことが叶わない恋人や家族も多いことを考えると、本当に胸が痛みます。これからの新しい生活様式の中で、結婚式や、もしかしたら結婚生活そのものの在り方も変わっていくのかもしれません。
けれど、いつかまたみんなと笑顔で出会えるときが来ることを信じましょう。そして、そのときがくれば、ぜひお友達を精一杯祝ってあげてください。大切なことは、祝う気持ち。時代が変わろうが状況が変わろうが、その根幹だけは変わることはありません。
あとがき
友人の一世一代の晴れ舞台で演奏をさせていただける、と言うのは本当に有難い話です。もしその機会があったら、変に迎合したり悩んだりせずに、自分が1番届けたい曲を選んでくださいね。そして、その曲を自分が自信をもって弾ける曲にするのは、あなたです。
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